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相続税節税のための不動産購入は無意味?相続税路線価を国税庁が否定した理由

 

日経新聞,相続税,路線価

日経新聞 相続税路線価を否定した国税の記事

相続税の支払いをできるだけゼロにしたい。

数億円の資産をもつ富裕層であれば、ご本人はもちろん、その親族が気にするのが相続税だと思います。

日本の相続税の仕組みは、相続の額に応じて税率が高くなる仕組みとなっており、最高税率は55%にも及びます。

これを回避するために、銀行・コンサルタントの提案で、不動産購入する節税方法が大流行していました。

しかし、2019年11月の東京地裁判決によって、この節税スキームが否定されてしまいました。なぜ、国税庁は、相続税路線価を否定しはじめたのでしょうか?詳しくみていきたいと思います。

 

不動産購入で相続税節税できる仕組み 

不動産購入することで、なぜ、相続税を節税することができるのでしょうか?まずは、この仕組みをわかりやすく解説したいと思います。

まず、結論からお伝えすると、都心の不動産は、実際に取引されている価格と、路線価が大きく乖離しているため、その乖離分だけ課税資産を圧縮できので節税できるのです。

たとえば、資産6億円を持っている、たぬきさん(87歳)がいたとします。

資産6億円を銀行口座にいれたまま、たぬきさん(87歳)が死んでしまうと、相続人である、たぬきさんジュニア(50歳)は資産6億円に対してかかる相続税2億5800万円を国税に支払う必要があります。

資産6億円の相続税計算
資産6億円×50%-4,200万円(控除額)=2億5800万円
※相続税計算方法は、東京税理士会のサイトを参考にしています。 

 

 たぬきさん(87歳)が一生かけて築き上げてきた資産6億円の約半分が、相続税として没収されてしまうイメージになります。

 相続資産に応じて相続税の税率は変わってくるのですが、できることなら

相続税を支払いたくない

と考えると思うのが資産家たぬきさん(87歳)の本音ではないでしょうか?

そこで、たぬきさん(87歳)は、銀行コンサルタントに相談した結果、現金6億円で不動産を購入することにしました。

 

たぬきさん(87歳)は、表参道の土地4億円を購入し、その土地に建物を2億円で建てることにしました。

また、表参道という好立地を生かして賃貸用マンションにして毎月の賃料を得ることにました。建物が完成したので、「表参道タヌキヒルズ」という名称で入居の募集をだしたところ、すぐに満室になり、賃料収入が年間3600万円の物件となりました。

「表参道タヌキヒルズ」物件概要

  • 所有者:たぬきさん(87歳)
  • 物件価格:6億円(土地4億円と建物2億円を現金一括購入)
  • 年間賃料収入:3600万円
  • 表面利回り:6%

たぬきさん(87歳)が所有する「表参道タヌキヒルズ」は、表面利回り6%となりました。表参道の平均的な新築投資用物件の表面利回りは3%後半から4%前半だといわれていますので、なかなかスゴイになっています。

たぬきさん、やり手ですね!

この状態で、たぬきさん(87歳)がお亡くなりになった場合に、相続税はいくらになるのでしょうか?

たぬきさん(87歳)は、顧問税理士に相続税支払い額のシュミレーションを依頼をしまいた。その結果、

表参道タヌキヒルズの相続税評価額は3億円で、相続税支払い額は1億800万円ということがわかりました。

なぜ、たぬきさん(87歳)が現金6億で購入した物件が、3億円という評価になるのでしょうか?

その理由は、都心の人気エリアにある不動産は、時価と相続税路線価に大きな乖離があるからです。

時価とは、実際に売買されている価格のことです。不動産屋が実際に販売している価格になります。

相続税路線価とは、国税が不動産の税金を計算するために定めているもので、毎年7月1日に更新されています。

都心の人気エリア(港区など)では、時価と路線価に大きな乖離があり、時価に対して路線価が半値以下になっています。

一方で、都心から離れた地方になると、時価と路線価が同じ評価になったり、場合によっては時価よりも路線価の方が高い評価になるケースがあります。

  1. 都心人気エリア 時価 > 相続税路線価
  2. 地方の過疎地  時価 < 相続税路線価

資産家たぬきさん(87歳)は1のケースになります。都心人気エリアである港区に「表参道たぬきヒルズ」を建築したので、相続税の課税対象を約半分に圧縮することができました。具体的にいうと

相続税課税対象 現金6億円が相続税路線価3億円に圧縮

されたことになります。次に相続税路線価3億円に対してかかる相続税をみていきたいと思います。

相続税路線価3億円×45%-2,700万円(控除額)=1億800万円
※相続税計算方法は、東京税理士会のサイトを参考にしています。 

たぬきさん(87歳)が現金6億円を銀行口座に貯金していた時には2億5800万円の相続税がかかる計算になりました。

ところが、表参道タヌキヒルズに投資したことで、相続税評価額は3億円に圧縮され、それにかかる相続税は1億800万円で済む計算となります。

結果として資産家たぬきさん(87歳)は、相続税の支払いを1億5千万円も節税できたことになります。

 

このような仕組みで、都心の人気エリアに不動産を購入すると相続税を半分程度に圧縮することできるのです。

しかし、相続税路線価を否定した判決がでてしまい、大きな波紋となったのです。

 

相続税路線価を否定した地裁判決ニュース概要

「路線価に基づく相続財産の評価は不適切」とした東京地裁判決が波紋を広げている。国税庁は路線価などを相続税の算定基準としているが、「路線価の約4倍」とする国税当局の主張を裁判所が認めたからだ。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52324200Y9A111C1CR8000/

 国税は、不動産を相続した遺族の相続税支払いを容易にするために、毎年7月に相続税路線価を公表し、相続税の計算に使用する基準としていました。

しかし、時価が路線価の4倍になっていた事案が発生し、路線価ではなく時価で評価すべきと主張してきたのです。

そして、地裁も国税の主張を認める判決を下してしまい、大きな波紋を呼ぶことになりました。

国税が毎年7月に決めている相続路線価を、国税が否定するとは、どう考えてもおかしすぎる話です!

この事案では、相続税路線価が3億3千万円となっていました。しかし、国税が計算した時価は12億7300万円となり約4倍も乖離がでていまいた。

 8月末の判決で東京地裁が路線価に基づく相続財産の評価を「不適切」としたのは、2012年6月に94歳で亡くなった男性が購入していた東京都内と川崎市内のマンション計2棟。 購入から2年半~3年半で男性が死亡し、子らの相続人は路線価などから2棟の財産を「約3億3千万円」と評価。
(途中省略)

国税当局の不動産鑑定でも2棟の評価は約12億7300万円で、路線価とはかけ離れていた このため国税側は「路線価による評価は適当ではない」と判断。 
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52324200Y9A111C1CR8000/

相続税路線価と時価の間に4倍の乖離があることに驚きですよね!しかし、相続税路線価の計算方法そのもに対して問題があったことは指摘されていません。

ニュースをみていると国税の主張は、

「乖離が大きすぎるから今回は時価で計算すべきだ!」

と訴えているだけのようにみえます。なぜ、国税は自分達が公表している路線価を簡単に否定してしまったのでしょうか?こんなことをされたら、納税者は困惑してしまいます。

その原因は、いろいろと考えられますが、今回の事案では相続税の納税額がゼロになってしまったからではないでしょうか?

銀行などからの借り入れもあったため、相続税額を「ゼロ」として国税側に申告した。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52324200Y9A111C1CR8000/

この資産家の相続人は、相続税路線価3億3千万円の物件に対する相続税1億2千300万円と銀行借入残債1億2千300万円を相殺できることを理由に相続税の支払いをゼロで申告していました。

国税が算出した時価12億7300万円で相続税を計算すると、

時価12億7300万円-借入残債3億3000万円=9憶4300万円
9憶4300万円×55%-7200万円(控除金額)=4億4665万円(支払い相続税)

国税が主張する計算だと相続税は4億4665万円になる計算となります。

このことから、国税は、相続税として4億4665万円支払うべきなのに0円と申告するのは不当だと言っていることが分かります。

国税は、この相続人に対して、3億円の追徴課税を請求しています。

動産鑑定の価格を基に「相続税の申告漏れにあたる」と指摘し、相続人全体に計約3億円の追徴課税処分を行ったが、相続人らは取り消しを求めて提訴していた。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52324200Y9A111C1CR8000/

国税が主張している本来の相続税支払い額4億4665万円に対して3億円の追徴課税を請求って、あまりにデカすぎるペナルティーだと思います。

税理士や弁護士の見解はどうなのでしょうか?

相続税に詳しい佐藤和基税理士は今回の判決を受け、「金額の大きな相続では、手法やリスクの検討をこれまで以上に慎重にしないといけなくなる」と懸念する。税務訴訟に強い平川雄士弁護士も「正当な不動産投資をも萎縮させる可能性がある。国税当局は通達を適用する基準を明確にすべきだ」と指摘している。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52324200Y9A111C1CR8000/

平川雄士弁護士の言う通り、明確な基準を通達すべきだと思います。

例えば、
相続税路線価が6億を超える場合は、不動産鑑定士による時価評価で相続税を算出しなければならない。
といた明確なルールや指針をだしてくれれば、現場が困惑することがなくなるだろうと思います。

 

まとめと対策

今回の地裁の判決によって、相続性路線価のみを相続税計算の根拠にすることは危ういということがよく分かりました。

今後は、不動産取得によって、相続税を圧縮するスキームは使用できなくなるのでしょうか?

個人的には、ちょっと工夫すれば、イケるのでは?と考えてます。

今回の相続のケースでは、亡くなった資産家は相続税路線価3億3千万に対する相続税1億2千300万円と銀行借入1億2千300万円を相殺することで相続税支払いをゼロにしていたと報じらていました。

しかし、銀行借入の残債が10憶程度あったらどうでしょう?

国税が算出した時価12億7300万円に対する相続税4億4665万円を大きく超えることになり、時価評価でも相続税を支払わなくてもよいことになります。

今後は、資産家は現金メインで不動産を購入するのではなく、あえて融資を大きく利用して、現金資産の数倍の不動産を購入することで、相続税を銀行残債と相殺するスキームが主流となってくるのではないでしょうか?